2008年07月27日

2008/07/27

ようやくIntroduction to the Theory of Statisticsが届いたけど、モチベーションが続くか非常にあやしいのでノートを取りながら進めようかと。 私の英語力はかなり怪しいのであまり参考にはしないように。突っ込みは大歓迎です。

2.2 古典確率(p3)

起こりうる場合の数により定義される確率。直感的にはわかり易い。たとえば、 コインを一度投げたとき表が出る確率は1/2だろうし、さいころを振って2以下の目がでる確率は1/3だろう。

ただ、 試行の結果起こるそれぞれの結果は互いに背反等しく起こりうるものでなければならない。

たとえば、ちょっと曲がっていて明らかに表が出やすいコインに関する情報は、この古典確率によっては得られない。

また、場合の数が無限大であった場合も問題。

たとえば正の整数からランダムにひとつの数を選ぶとき、それが偶数である確率を考える。これは直感的に1/2であることが分かる。 無限大の場合の数を考えるのは無理なので、最初の10個の数のみを対象に考える、最初の100個の数のみを対象に考える、…などとしてみる。 対象を限定してみても、やはり偶数の数は半分なので問題はない…ではない!

「正の整数」を表す数列が次のようなら確かに問題はない。

1, 2, 3, 4, 5, 6, ....

しかし、次のような数列によっても「正の整数」は表現できる

1, 3, 2; 5, 7, 4; 9, 11, 6; ...

これは単に前述の数列の並びを変えて「奇数、奇数、偶数」の順にしただけのものだ。 無限に続ければ全ての正の整数をカバーできることは明らかだ。しかし、この数列を用いて先のように場合の数を限定して考えてみると、 確率は1/3になってしまう!

これは考える場合の数をいくら増やしても解決されない。

場合の数が無限大の場合、その場合をどのように並べるかという問題があるために古典確率は役に立たない。

これらの問題の解決のためには、確率の定義を拡大するか、別の定義によるものをもってこないといけない。 その確率は経験的確率と呼ばれる。

2006年07月27日

植物病理後半ポイントまとめ

 **土壌病害
土壌病害のうち, 一部は能動的に移動するものの,ほとんどは待機型である.待機中の病原菌は耐久生存器官を形成し, パッチ状にゆっくりとその範囲を広げていく.広がりは遅いものの耐久能力が高いので防除が難しく,連作をすると年々広がっていき, 最終的には産地崩壊などを引き起こす.
地上部病害と比較すれば, 地上部病害はその広がり方が複利的であるのに対し,土壌病害は単利的に広がると言うことが出来る.

 **病気は例外的

病原の8割は菌類であるが, 10万種の菌類に対して病原菌は8000種程度である. つまり,ほとんどの菌は腐生であるのが普通であって,病気は例外的な現象と言える.

 

**宿主範囲

病原菌の宿主範囲というのは限定的であるのが普通である.いくつもの宿主に感染するものは多犯性病原菌と呼ばれ, その代表的なものが世界2大病害の1つとして知られるワタ根腐病原菌 (Phymtotrychum omnirotum) であり,これは10001500種の植物を侵す.

ちなみに2大病害のもう1つはコムギ立枯病菌 (Gaeumannomyces graminis var tritici) で,これはGaeumannomyces graminisの変種で, 病原性が分化したものである.例えばG. graminis var avenaeならばエンバクを侵すし, G. graminis var graminisならばイネを侵す.

 

 

**病原性の分化, 寄生性の分化

病原性や寄生性が分化しているのはG. graminisだけではない. 例えば各種植物の萎凋病を引き起こすFusariumu oxyporumには分化型 (forma speciales = f. sp.) が存在し,f. sp. spinaciaeならばホウレンソウ, f. sp. lycopersiciならばトマト, f. sp. rophaniならばダイコン, f. sp. fragariaeならばイチゴなどと80種の分化型が知られている.

また,細菌の病原型はpathovarで表される.

 

**競争的腐生能力 (competitive saprophytic ability

菌類が植物遺体などの基質を利用できる程度を表したものが競争的腐生能力である.これは一般に腐生菌ほど能力が高く, 寄生菌ほど能力が低くなる.

 

**植物と病原体

非宿主植物と非病原体が出会っても発病しない.これは互いに相手を認識していないためだと考えられている. 同様に非宿主植物と病原体が出会っても発病しない.これは少し複雑で,病原体は相手を認識していないが, 植物の方は病原体を認識していると考えられている.そして宿主植物と病原菌が出会ったときは病気が発病するが, このときは両者共に相手を認識していると考えられている.

 

**レース

植物の種ではなく,品種群に対する病原性の分化をレースと呼ぶ.あるレースとある品種を見たとき,親和性 (compatible) の場合はSと表記し, 非親和性(incompatible) の場合はRと表記する.

 

**gene-for-gene theory

作物品種が特定のレースに示す抵抗性(非親和性)反応は,病原菌レースの「非病原菌遺伝子」が作物品種の「抵抗性遺伝子」 に対応した場合にのみ発現するという考え.

このとき,「非病原菌遺伝子」と「抵抗性遺伝子」はともに優性であるのが普通である(ただし例外も存在する).

なぜ「非病原性遺伝子」などというものを病原菌が持ち,それを植物が認識して抵抗性を示すのかについて詳しくは分かっていないが, 「非病原性遺伝子」の中には病原性を強化するようなものがあり, そうしたいわば武器のようなものを植物が認識して抵抗性を示しているのだという説明はできる.しかし,全ての「非病原性遺伝子」 が病原性に関連しているというわけではない.

 

**垂直抵抗性と水平抵抗性

前述したレース-品種間で発揮される抵抗性を垂直抵抗性と呼ぶ. 垂直抵抗性は遺伝子間の相互作用であるので環境により変動しにくい.真性抵抗性,質的抵抗性とも呼ばれる. これに関与する遺伝子はmajor gene (主動遺伝子)と呼ばれる.

一方,レース-品種間で特異な相互関係の見られない抵抗性は水平抵抗性と呼ばれる. これはQTLの加算的効果により発揮される抵抗性で, 特定の成分の種類や量,形態的特性や病原性因子に対する感受性の程度などに関与すると考えられており, 環境により変動しやすい. 圃場抵抗性,量的抵抗性とも呼ばれる.これに関与する遺伝子はminor genes (微動遺伝子)と呼ばれる.

 

**侵入抵抗性と拡大抵抗性

病原体が宿主組織に侵入しようとするときに働く抵抗性を侵入抵抗性と呼ぶ.厚さや硬さといった構造, ワックスや抗菌性物質などが関与する場合が多い.

また,病原体が宿主組織に侵入した後に,病原体の増殖と蔓延に対して働く抵抗性を拡大抵抗性と呼ぶ.

 

**静的抵抗性

植物が本来備えている抵抗性.構成的抵抗性とも呼ばれる.潜在性の抗菌物質,細胞壁の厚さ硬さ,形態などが要因.これはさらに形態的障壁, 生化学的障壁の2つに分けることができる.

 

**形態的障壁

例えばイネのいもち病などに対する抵抗性は表皮細胞のケイ質化の程度に関連している.

また,イネ白葉枯病菌に抵抗性のあるアシカキは,孔辺細胞の微小な突起により菌の侵入を妨げている.その証拠に, イネ白葉枯病菌をアシカキに傷を付けて接種すれば感染する.

 

**生化学的障壁

植物成分が抵抗性に関与する場合, その成分が菌にとっての栄養分である場合と抗菌性物質である場合との2つが考えられる.

前者の場合,例えばいもち病ではN肥料が多いと罹りやすくなる. これはNが多いと植物体内にいもち病菌の養分となりうるアミノ酸が増加するためである.

また後者では,例えばGaeumannomyces graminis var. avenaeはエンバクの産生する抗菌物質のアベナシンを分解する酵素を持っているため, エンバクに感染することが出来る.

ちなみに植物体が病原微生物の攻撃を受ける前から持っている抗菌物質をプロヒビチン, 病原微生物の攻撃により簡単な化学変化を起こして合成される抗菌物質をインヒビチン,両者を総称してファイトアンティピシンと呼ぶ.

 

**動的抵抗性

病原体の攻撃により新たに誘導される抵抗性のこと.誘導抵抗性とも呼ばれる. これには植物体の一部に現れる局部的抵抗性と全体に現れる全身抵抗性がある.また,その現れ方から形態的反応と生化学的反応に分けられる.

 

**形態的反応

まず一つの例としてパピラ(乳頭突起)が挙げられる.これは病原菌が形成した付着器から進入菌糸が伸びてきたとき, 細胞膜の内側に形成される突起である.パピラは多糖であるカロースや無機成分,フェノール物質などが沈着して形成され, 菌糸の侵入を食い止める.

次にwall depositionが挙げられる. これは細胞壁自身が肥大して菌糸の侵入を食い止めるものである.

さらに組織のリグニン化も抵抗性に関与する.病原菌の伸長とリグニン化のどちらが早いかが抵抗性と羅病性を左右する.

また,菌の感染により生成される過酸化水素はヒドロキシプロリン,プロリンに富む糖タンパクの架橋重合を促進し, 細胞壁強度を増すと考えられている.

非親和性病原体が抵抗性品種の組織内に侵入すると,植物細胞は急激に形態学的・生化学的変化を起こし,病原菌を封じ込める. これは過敏感反応(hypersensitive reaction) と呼ばれ,これによる植物細胞の死亡は過敏感死と呼ばれる.過敏感死を起こすと侵入した菌も死滅する.

 

**生化学的反応

**ファイトアレキシン

「微生物の攻撃によって植物中で新たに合成・蓄積される低分子の抗菌性化合物」の事をファイトアレキシンと呼ぶ. これは侵入抵抗性に関与すると考えられる第一相のファイトアレキシンと, 拡大抵抗性に関与すると考えられる第二相のファイトアレキシンとに分けられる.

 

**エリシター

ファイトアレキシンを誘導する物質のことをエリシターと呼んだ. 現在では植物に抵抗反応を誘導する物質を総称してファイトアレキシンと呼んでいる.

 

**非生物的エリシター

水銀や銀,銅やアルミといった重金属,紫外線,合成化合物などは非生物的エリシターと呼ばれる. 農薬の中にはplant activatorと呼ばれる全身抵抗を誘導することを目的とした, 抗菌性を持たない合成化合物も存在する.

 

**生物的エリシター

菌体から出る各種の物質,例えばタンパク質,糖タンパク質,ペプチド,糖ペプチド,多糖類,脂肪酸,キチン,グルカン,毒素,抗生物質, シデロフォアなどはエリシターとなりうる.また胞子発芽液や培養ろ液,菌体細胞壁もエリシターとなる.

また,病原菌の酵素により細胞壁が破壊される過程で発生する植物のペクチン断片や糖ペプチドもエリシターとなることがあり, これらは特に内生エリシターと呼ばれる.

なお,エリシターは受容体(レセプター:receptor) に認識されて初めて作用する.

 

**PRタンパク質 (pathogenesis-related proteins

病原微生物の感染やエリシター処理により産生される,健全植物には見られない各種タンパク質のこと.キチナーゼやグルカナーゼ, パーオキシダーゼやオスモチンなどが含まれ,また機能不明のタンパク質も含まれる.

 

**感染阻害因子

病原菌の侵入のみを阻止する.胞子発芽や発芽管の伸長は阻止しない.

例えばカテキンなど.

 

**その他の抗菌性物質

多くはフェノール性物質.フラボン,クロロゲン酸,タンニンなど.

病原菌の感染により増加

 

**抵抗反応における情報伝達系 (signal transduction cascade

まず菌の侵入に伴い,細胞外のCa++Ca++チャンネルを経て細胞内に流入する (このとき菌がCa++キレーター (Mn EGTA) を産生すると,その後の情報伝達が阻害され,ファイトアレキシンの誘導も抑制される.).

次にGTP結合タンパク質の活性が増大し, 続いて各種タンパク質リン酸化酵素(プロテインキナーゼ)が活性化される(ここでプロテインキナーゼ阻害剤を処理すると, 抵抗性発現が抑制される).

 

**セカンドメッセンジャー

外界からの刺激などで細胞内に作られる情報因子.Ca++CAMP, 活性酸素種のほか,植物のみにみられるものとしてサリチル酸,ジャスモン酸,エチレンなどがある.

 

**植物病原菌に必要な三つの性質

植物病原菌に必要な性質として,まず宿主に侵入する性質,つぎに宿主の抵抗性に打ち勝つ性質, 最後に宿主を加害する性質の3つが挙げられる.

前者2つは侵略力と呼ばれ, 加害する性質は発病力と呼ばれる.

侵略力があるからといって必ずしも発病力を備えているとは限らず,その好例がマメ科植物に共生する根粒菌である. 根粒菌は発病力を備えていないので病原菌ではない.

 

**宿主に侵入する性質

気孔や水孔といった自然開口部から侵入する菌もいるが,多くの糸状菌は細胞壁を破って各皮侵入する.角皮侵入する病原菌は, 物理的な侵入力と科学的な侵入力を備えている.

 

**物理的な侵入力

角皮侵入する病原菌は,金箔やポリビニルフォルマール,コロジオン膜といった酵素で分解できない膜も貫通することから, 物理的な侵入力を備えていることが分かる.

これは付着器の内部に発生する高い膨圧によるもので, この膨圧発生にはメラニンによる細胞壁強化と浸透圧を高めるためのグリセロール流出を防止する作用が重要である.実際, メラニンの沈着をトリシクラゾールやピロキロンといった薬剤により阻害してやると病原菌の侵入力は無くなる.

 

**化学的な侵入力

化学的な侵入力に関しては,植物表層,細胞壁を分解するクチナーゼ,セルラーゼ,ペクチナーゼといった酵素が関与すると考えられている. 事実,エンドウ根腐病菌(Fusarium solani f. sp. pisi) ではクチナーゼをコードする遺伝子を破壊すると病原性が低下する.

だが一方でクチナーゼをコードする遺伝子を破壊しても病原性の低下しない菌もあり,クチナーゼの役割については評価が分かれている.

 

**宿主の抵抗性に打ち勝つ性質

オオムギにメロンうどん粉病は感染しないし,メロンにオオムギうどん粉病は感染しない.だが,オオムギにオオムギうどん粉病を接種した後, その菌糸を拭き取ってメロンうどん粉病がオオムギに感染できるようになる. 同様の処理をメロンに行うとメロンにオオムギうどん粉病が感染する.これは受容性の誘導と呼ばれる.

逆にオオムギにメロンうどん粉病菌を接種した後オオムギうどん粉病菌を接種すると感染が起こらない.こちらは拒否性の誘導と呼ばれる.多分.

これには2つの仮説があり, 一つは親和性菌がエリシターを生産しないので宿主の動的抵抗性を誘導しないというもの, もう一つは親和性菌が宿主の動的抵抗性を誘導するが,その障壁を取り除く能力を持っているか, 障壁の形成を阻害する仕組みを持っているというものである. ただし前者は病原菌もエリシターを生産することが確認されているので現在は否定されている.

 

**障壁を取り除く能力

先にも述べたエンバク立枯病菌(Gaeumannomyces graminis var. avenae) はエンバクの生成する抗菌物質のサポニン(アベナシン)を分解する酵素(アベナシナーゼ)を有するためエンバクに感染することができる.

同様に例えばトマトならばトマトのサポニン(α-トマチン) があり,トマトの病原菌はそれを分解する酵素(トマチナーゼ)を有している.

また,ファイトアレキシンの分解・解毒能力が病原性に関与する場合もある.一般的に病原菌は非病原菌よりもファイトアレキシン耐性が高い. たとえばエンドウ根腐病菌(F. solani f. sp.pisi) の病原性程度はエンドウのファイトアレキシンであるピサチンへの耐性の程度が関係あり, またピサチンへの耐性にはピサチンを解毒するピサチンメチル化酵素が関与している.

しかしながら宿主のファイトアレキシンに強い感受性を示す病原菌もあり,必ずしも病原力とファイトアレキシン耐性は相関しない.

 

**障壁形成を抑制する能力

エリシターの働きを阻害し,宿主の動的抵抗性誘導を阻害する物質のことをサプレッサーと呼ぶ.サプレッサーは 「病原菌の毒素とは異なる宿主特異的な抵抗性抑制因子」と定義されている.

サプレッサーは病原菌の培養液や胞子発芽液,菌体破砕液に含まれる.

エリシターに比べ低分子なので,エリシターより先に受容体に結合することで宿主の膜構造に異常をきたし, ATPaseなどが機能障害をおこし, その働きを阻害する.

なお,サプレッサー存在下だとサプレッサーを産生する菌の宿主植物へ非病原菌が感染できるようになる場合がある.これは感染誘導と呼ばれ, サプレッサーが宿主特異性の決定因子であることを示している.

 

**宿主特異的毒素 (host specific toxin: HST

Alternaria alternataは本来腐生菌であるが, 病原性を示すpathotypeが確認されている. 各pathotypeと腐生種の間に形態的な差はなく, 生産する毒素のみが異なる.この毒素は宿主特異的毒素(HST) と呼ばれ,次のような特徴がある.

+宿主植物にのみ毒性を示すこと

+植物の毒素耐性と病害抵抗性が一致すること

+菌の毒素生産能と病原性が一致すること

+病原性胞子の発芽時に毒素が生産・ 放出されること

+毒素によって宿主細胞の生理学的変化が引き起こされ, 病原菌の感染を可能にすること

なお,HSTもサプレッサーと同様に宿主特異性の決定因子となる. すなわち,HSTもサプレッサーであると言うこともできる.

 

**加害する性質

病原菌が宿主植物を加害する因子としては,酵素,毒素,そして植物ホルモンが挙げられる.

酵素としては野菜類軟腐病菌(Erwinia carotovora) の産生するペクチン分解酵素などがある.

毒素としては先にも述べた宿主特異的毒素の他,非特異的毒素(non-host specific toxin: NST) がある.これにはFusarium属の産生する, 萎凋を引き起こすフザリン酸などがある.

 

**フザリン酸

Fusarium oxsporumの産生するフザリン酸とフザリン酸に抗菌活性のあるPGPRとの間には次のような関係がある. PGPRF. oxsporumに抗菌活性を示すのだが, フザリン酸にはPGPR産生を阻害する性質もある. つまりフザリン酸はF. oxsporumの自衛手段としても役立っているのである.

 

**病原性の証明

病原性を証明する方法の一つは,病原性遺伝子を単利し,それを非病原菌に導入することである.これにより病原性を示したなら, 病原性を証明したと言うことが出来る.

だが,ある場合に置いて病原性を決定したと思われていた遺伝子が非病原菌から見つかることもある.つまり, 病原性は単一の遺伝子によっては支配されていないということである.

もう一つの方法として,病原性の変異を調べるという方法がある.

これは病原性の喪失株ともとの病原性株との遺伝子構造を比較し,遺伝子の機能解析を試みるというのもである.

 

**宿主ファクター

Fusarium solani f. sp. phaseoliを宿主植物でないダイコンに繰り返し接種しているといつしかダイコンに感染できるようになる. また,Verticillium alboratnum pv. menthaeをトマトに繰り返し接種するとトマトに感染できるようになるばかりか, 本来の宿主であるハッカへの感染力が低下する.いずれも原因は不明である.

サトウキビ眼点病菌(Helminthosporium sacchari) は時に病原性を失うが,これにサトウキビ成分のセリノールを合わせてサトウキビに接種すると病原性が復活し,宿主特異性毒素 (HST) の産生も再開する.

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2006年07月23日

後半まとめ

?L.転流

植物に置いては,光合成により炭水化物が生合成され,根からは養分吸収が行われる. これらは生長部位と同じ位置で行われているワケではないので,生長部位へ送ってやる,すなわち転流の必要性がある.

光合成産物,すなわち有機物の転流は師管を通じて行われ,根から吸収された養分,すなわち無機物の転流は導管を通じて行われる.

1)シンクとソース

シンクとは転流先,すなわち生長点,展開途中の葉,肥大中の果実や球根のことを指す.ソースとは転流元, すなわち光合成を行っている葉,養分を吸収している根のことを指す.ソースからシンクへ転流が行われるわけだが,これは「シンク能」 が関与する.シンク能とはすなわち植物ホルモン活性の高低と言い換えることが出来る.

例えば果実では種子において植物ホルモンが合成されるため,種子数の多い果実がよく肥大するが,種子数の少ない果実は生育を停止し, 最終的には整理落果してしまう.果樹ではこれを防ぐため人為的にシンクの数を制限する,すなわち摘果が重要となる.

また,競合は果実間のみではなく,果実と生長点の間でも起こる.とくに徒長枝などは整理落果の原因となりやすいので, 芽かきと徒長枝の整理も果樹には重要である.

なお,頂芽優勢についてもシンクとソースの概念を用いて説明が出来る. 頂芽優勢は頂芽のシンク能が他の芽に比べて高いので起こるのである.

2)転流に関わる要因

転流に関わる要因の一つに植物体内の水分含量が挙げられる.たとえば植物体内の水分含量が高く水ストレスの低い条件では, CO2交換速度が高くなり多量の光合成産物が葉に蓄積する.これにより葉の浸透圧が上昇し,水分が葉に流入,この流れが転流を阻害するため, 果実では糖度低下が発生する.なお,いわゆる「水切り」は水ストレスを高めることで転流を促進し,果実の糖度を上昇させる手法である.

もうひとつの要因として夜温が上げられる.夜温が低いと果実への転流が増え,高いと生長点や幼葉への転流が促進されるのである. 詳しいことはよく分かっていないが,夜温が高いと呼吸が促進されるため,ソース能が低下しているのだと考えられている.

?M.栄養生長と生殖生長

施設園芸においては,栄養生長と生殖生長を効率よく制御することが重要である.

植物は利用部位などにより,「栄養生長のみを行うもの」「栄養生長と生殖生長を同時に行うもの」「栄養生長を行わせた後, 生殖生長を行うもの」の3つに大別でき,それぞれに合わせた栽培管理が必要となる.

@栄養生長のみを行うもの

葉菜類や観葉植物がこれで,生殖生長を開始してしまうと商品価値が著しく低下するため, 花芽分化を起こす要因を把握し, 環境制御してやる必要がある.花芽分化要因としては例えば温度の高低,短日,長日,窒素欠乏, 土壌水分の低下などが挙げられる.

また,これらに属す植物はシンクが生長すればソースとなるため,シンク間の競合を考える必要はなく, とにかくCO2交換速度を高めてやればよい.窒素成分を多く施肥し,十分な潅水をしてやればよい.

A栄養生長と生殖生長を同時に行うもの

ウリ科,ナス科の果菜類やペチュニアなどの花苗がこれに含まれる.

栄養生長を行う新梢(シュート)の先端の生長点が花芽分化し,下位の腋芽生長点が再び栄養生長を継続, 腋芽は一定の栄養性長後花芽分化し, また下位の腋芽生長点が栄養生長を継続,これを繰り返す.このとき, 花芽分化した花芽と生長をはじめた腋芽生長点の双方が極めて高いシンク能を持つため,シンク間競合が発生する. このとき果実が競合に負けてしまうと生理落果や果実への糖分転流抑制などが発生し,収量と品質が低下する.

よって,これら作物を生産する農家は栄養生長と生殖生長のバランス管理を行わなければならない.

トマトの例を挙げて栄養生長が勝ってしまっている場合と正常な場合の比較をすると,栄養生長が勝っていると果実は大型の扁形果となり, ヘタの数は5枚を超え,花柱が長くなり,葉からは不定芽が発生するのに対し,正常なものは上から見て円形で5枚のヘタを持った果実がなり, 花柱の長さも葯と同程度で不定芽も発生しない.

なお,栄養生長と生殖生長のバランスを管理する上では,とりわけ窒素とP, Kの量的バランスが重要となる.

B栄養生長を行った後,生殖生長を行うもの

 メロンやカリフラワー,果樹,ポインセチアや葉ボタンがこれにあたる.  生長初期には栄養生長を促進し, CO2交換速度を高める栽培管理をし,花芽分化をした後は栄養生長期間のシンク能を低下させてやる.

X.施設園芸における環境制御

・CO2制御

大気中のCO2濃度は350〜380ppmである.これは大気1m3当たりに630mgの CO2が含まれているということになる. これを光合成で消費するとすれば,そのCO2交換速度は[21mg CO2・dm-2・ h-1]になり, これはキュウリで言えばわずか10枚の葉の光合成速度に相当する.つまり, 閉め切った施設内ではCO2は比較的短時間で消費されつくしてしまうということを意味する.

CO2施与は通常1000ppm〜2000ppm程度にまでCO2濃度を高めてやる.これはプロパンガスや灯油の燃焼, あるいはボンベから直接放出してやるという方法を採る.

ただし,天窓と側窓が開放され,換気されると効率が低下するため, CO2施与は日中ではなく日の出前から午前8時くらいまで行うのが普通である.ただし, 気温が上昇せずに換気を行わない雨天時や曇天時には終日CO2施与を行う. これには日照不足により低下したCO2交換速度を晴天時レベルまで高めてやるという意味もある.

なお,土壌からは土壌微生物の呼吸によりCO2が放出されるため,土壌栽培ではCO2が欠乏するようなことは起こりにくい (ただし冬季など地温が低い場合は放出量も低下する).この事から考えると, 土壌微生物の活性がほとんど無い養液栽培などではCO2施与が極めて有効な制御技術であることが分かる.

Y.養液栽培

施設園芸の中の先進技術が養液栽培であり,その究極形態は植物工場である.

・養液栽培の歴史

養液栽培の歴史は培養液の開発から始まる. Sacks(1860)やKnop(1861)らが水耕法により植物に必要な元素とその量を解明し,水耕栽培に用いられる培養液を開発した.

以降しばらく水耕栽培は実験の手段でしかなかったが, WW2時の米軍により実際の栽培に応用された. 珊瑚礁由来で土壌が貧弱な南洋諸島で野菜を生産するための手段であった.

戦後は日本で清浄野菜を得るため (当時の日本の栽培方法はアメリカ人に耐えられるものではなかった), 当時としては世界最大規模の生産施設を調布(22ha)と大津 (10ha)に建設した.

余談となるが,養液栽培とは養液を用いる栽培全般を指し,その中の一つとして水耕栽培があるのであって, 両者の単語が意味するものは微妙に異なる.

・たん液式水耕

1964年に農水省の園芸試験場久留米支場で山崎らが開発した水耕方式.  養液タンクと栽培ベッド間を養液が循環するというもの.

養液が常時循環するため,新鮮な養液が常に根に供給される, 栽培ベッド内の養液が均一になるので植物の生育も均一になる, センサーを用いた自動制御が可能といった利点がある反面, 動力費が高く病害の蔓延が急速であるという欠点も持っている.

また,養液の総量が多いので養分と環境変動が緩やかであるが, 重量に耐えうる設備が必要なので設備費は高い.

この方式は根が完全に水中に浸っているので, 水中から酸素を取り込める水辺の植物に適している. 現に三つ葉やクレソンといった水辺の作物の生産拡大とともに普及していった.

・NFT水耕

NFTとはNutrient Film TechniqueもしくはNutrient Flow Techniqueの頭文字をとったもので,日本語で言えば薄膜養液水耕である.その名の通り,わずかな傾斜のついた栽培ベッド (チャンネルと呼ばれる)の上を養液が浅く流れるといったものである.

養液を掛け流しにする方式のため,養液量が少なくて済む.よって設備に強度は必要なく,栽培ベッドを高所へ上げることもできるし, ポンプも安いものでよい.また,養液の温度調節も容易である. 

ただ,養液量が少ないということは欠点でもある.例えば夏季の高温期には養液温度が上昇しやすく,根の活性低下,養分欠乏をまねく. またベッドの端と端では生育に差が生ずるのでベッド長は25m程度が限界である.

そして養液成分が変動しやすいという問題もあるが,これはセンサーを用いたコンピューター制御の導入で解決できる.

・ロックウール耕

ロックウール耕は1970年代にオランダで実用化され,急速にヨーロッパに広がった方式である. 日本へは1983年に筑波大学と農水省の野菜試験場に導入され,以降急速に普及した.切りバラでは60%と高い普及率である.

ちなみにロックウールとは火成岩を約3000℃で熔解し,これを細い穴から噴き出して固め, 繊維状になったものを集めて成形したものである. 気相率が高く,乾燥状態では固相はわずか3〜5%で, 水分を含んだときでも約40%の気相(畑土の4倍程度)を保っている.

なお,アスベストと混同しがちだが,アスベストが結晶質で細く,折れても針状であり,発ガン性を持つのに対し, ロックウールは非結晶質(ガラス質) でアスベストの数十〜数百倍の太さがあり,折れると非繊維状となり, 発ガン性のない全く別の物質である.

ロックウール耕はロックウールキューブに播種,あるいは挿し木をし,これをロックウールスラブ(ベッド)に置いて定植し, そこに点滴給液するというものである.給液量は蒸散量をもとにコンピューターで計算,制御される.なお,植物の蒸散量は気温,湿度, 日射量や風速等により規定されるが,温室内ではこれらをほぼ一定に保つことができるので蒸散量の計算をすることが可能である.

ただ,オランダなどでは制御不能な環境要因は日照程度なので蒸散量の計算がしやすいが,日本はそれに加え夏季の高温もあるので, これを要因に加えた計算プログラムが必要となる.

利点としては気相が高いということ,水分含量の調節が容易であるということ,ベッドや貯水タンクを省略して簡易化できるということ, 養液成分の調整が容易である,養液管理の自動化による大規模化が可能であることなどが挙げられる.

また,養液を回収しないので病害が広がりにくいという利点もあるが,現在は環境問題から循環型へ移行しつつある.

欠点としてはロックウールが2〜3作程度の使用しかできず,定期的な購入が必要であるということ, 蒸散量予測プログラムが完全でないので廃液が発生すると言うこと (これは前述したとおり循環型へ移行しつつある), 栽培マニュアルが不完全であることなどが挙げられる.これに対してはロックウール以外の資材の利用, プログラムの開発などの対策が考えられている.

・養液土耕

イスラエルで開発された方式で,基本原理はロックウール耕と同じである.異なるのは培地が土壌であると言う点. やはり正確な蒸散量の推定が必要である.

この方式のキモは養液を点滴する潅液パイプにある.単にパイプに穴が空いているだけでは水圧にムラが生じるが, 養液土耕で用いられるパイプには水圧を一定にするためにごく細い水路を通すという仕掛けが施してある.これがイスラエルの特許であり, 水分の貴重なイスラエルだからこそ開発しえた技術といえよう.

長所としては環境にやさしいこと,既存の土壌栽培技術が活かせるということ, 土壌の緩衝作用が活用できると言うこと, 特別な設備を必要としないことなどが挙げられる.

ただ,問題点として最も肝心な蒸散量予測プログラムが数種類の作物でしか作られていないということがある.今後の開発が期待される.

・Ebb & Flow(プールベンチ)

主に鉢物生産で普及している方法で,一定時間プールベンチに湛水し, 一定時間後にプールベンチを空にするという動作を繰り返すもの.

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2006年06月10日

前半まとめ

?K.病気とその成立

1.植物の病気

(1)植物の病気とは

病気とは絶え間ない刺激により、植物の生理機能が乱されている過程である。
(Horstall & Dimond 1959)

広義には植物の生理障害全般を指す。そのなかには病原の感染による伝染性の病気、環境要因の不適合等の非生物性・ 非伝染性の生理障害がある。狭義には、伝染性の病気のみを「植物の病気」という。

(2)病名と病原名

  1. 病名イネ稲熱病、トマト青枯病、リンゴ高接病のように<植物名+症状名>で表す。 
  2. 病原名
    細菌・菌類
    Agrobacterium tumefaciens のように、 一般には高等生物と同じく二命名法で表す。種の中に病原性に関する変異があるときは、Fusarium oxysprorum f. sp. lycopersici(分化型)のように三命名法で表す
    ウイルス・ウイロイド
    Cucumber mosaic virusのように、二命名法とは異なる呼ばれ方(宿主+病名) をする。二命名法を目指しており、例えばTabaco mosaic virusTobamovirus属というグループ(タイプ標本) に入れていくなどと決められていっている。
    ファイトプラズマ
    培養が出来ないために正規の学名が与えられていない。暫定的な種名が提案されている。

一般には一病名に対して一病原が対応する。ただし、ウイルス病やモザイク病のように病原が複数のもの、 根頭がんしゅ病のように宿主が複数のものも例外的に存在する。

2.病原

(1)病原の種類

病原は伝染性病原と非伝染性病原とに大別できる。

i)伝染性病原

大きさ、核酸の分子量の小さいものから、ウイロイド、ウイルス、原核生物(ファイトプラズマ、細菌)、菌類がある。その他、 線虫や原生生物が病原となることもある。

ウイロイド(viroid)
低分子(約10万Da)の環状一本鎖RNAからなる。タンパク質を翻訳する配列をもたない。感染因子とも呼ばれる。
ウイルス(virus)
細胞という形を持たない非生物である。ただ、核酸はDNAもしくはRNAで遺伝情報を持ち、 その働きは生物と本質的に変わらないので、広く「病原微生物」として認識されている。
原核生物(prokaryote)
原核生物の中でもファイトプラズマを含むモリキューテス綱は自己増殖する最小の微生物といわれる。 モリキューテス綱とグリーニング病原体などの原核生物の一部は一般の培地で培養が不可、あるいは困難なので、 難培養性原核生物として一括される。
菌類(fungus)
粘菌と真菌を含む真核生物(eukaryote)。特に真菌、なかでも糸状菌は植物病原として最大のグループを形成している。
線虫
原生動物
昆虫・ダニ
その他
ヤドリギなどの寄生高等植物による病気も少なくない。
ii)非伝染性病原

植物にとって不利な環境条件が原因となり病気(生理障害)を引き起こすこともある。

(2)主因と要因

病原のことを主因といい、発生や被害の程度に影響する環境条件を誘因という。そして宿主植物の抵抗性程度を素因という。 植物の病気は主因(病原)、誘因(環境)、素因(宿主)がそろうことで引き起こされる。 防除の上ではこの3つをそろえないように気をつけることが重要である。

(3)微生物の栄養摂取と植物との関係

i)絶対寄生(純寄生、obligate parasitism)
生きた細胞からのみ栄養摂取(寄生)。基本的に培養が難しい。
ii)条件的腐生(Jacultative saprophytism)
基本的に寄生だが、条件によっては腐生者として生活できる。
iii)条件的寄生(jacultative parasitism)
基本腐生だが、条件によっては寄生者に転ずる。
腐生(saprophytism)
病原性のない微生物の多くが腐生。いわゆる分解者。
共生(symbiosis)
互いに害を与えることがない。マメ科植物の根粒細菌など。

(4)病原の証明

・コッホの原則
  1. ある菌が常に羅病部に関係して見出される。
  2. その微生物を純粋培養し
  3. 健全植物に接種すると同じ病徴が再現され
  4. その再現された病植物から同一の微生物が再分離される。
※培養のできない病原の場合
絶対寄生菌
存在の証明が出来ればよい。純粋培養した微生物ではなく単胞子を用いて病徴再現を試みるなど。
ウイルス
精製したものを接種して病徴の再現を試みる。
ファイトプラズマ
特異的な遺伝子が確認できればそれを証明とする。

3.発病までのプロセス

(1)病原と宿主との遭遇

土壌にもとから病原が生息する場合と、なんらかの方法で病原が運ばれる場合とがある。後者の媒体としては風、水、昆虫などがあるが、 収穫後の流通過程など人為的原因で遭遇ということもある。

(2)侵入(invasion)

角皮侵入
クチクラ(ワックスとクチン)、そして細胞壁(セルロース、ペクチン)からなる表皮に穴を開けて侵入する。 クチクラ侵入とも呼ばれる。一部の菌類の侵入方法。
傷口、自然開口部からの侵入
自然開口部とは、気孔(stoma)、皮目(lenticel)、水孔(hydathode)、 蜜腺(nectarthode)などのこと。植物で最も軟弱な部分の一つである雄蕊柱頭からの侵入では直接花や幼果に発病する。 ウイルス、細菌、菌類などの侵入方法。
媒介者(vector)
アブラムシや線虫などによる。ウイルス、細菌、菌類の侵入方法。

(3)感染(infection)

侵入して定着、一定の増殖が可能になったら感染が成立したとみなす。このときから植物は宿主(host)の立場となる。

(4)発病(disease)

何らかの異常、すなわち病徴(symptom)を生じる。病徴を生ずるまでの期間を潜伏期間という。 病徴には全身的病徴(モザイク病など)と局部的病徴(斑点性の病気など)という区分と、 外部病徴(肉眼かルーペで見える)と内部病徴(顕微鏡を使うなどしないと見えない)という区分がある。

発病後に一時的に病徴が消失することがあるが、これをマスキング(masking)という。環境が改善すれば病徴は再び現れる。

うどん粉病にみられるような病原の集合体は標徴(sign)という。これは植物体側の変化ではないことに注意。

?L.病原学

1.ウイルス

1892にロシアのIwanofskyが、1898にオランダのBeijerinckがそれぞれTobacco mosaic virusを発見。細菌濾過器を通り抜けることから、「濾過性病原体」「毒液」などの意味をもつ「virus」 と呼ばれるようになる。

(1)ウイルスの定義

宿主の代謝系(リボソーム、tRNA、エネルギー)を利用して増殖(自己複製)する核酸とタンパク。生物的特性を持つが非生物(物質) である。

(2)ウイルスの基本的特性

  1. 生きた細胞でのみ増殖する。
  2. ウイルス粒子はRNAかDNAいずれか一方のみの核酸を含む。
  3. リボソームがない。
  4. 二分裂増殖しない。
  5. 抗生物質に対する感受性はない。

(3)ウイルスの形態、構造、組成

i)棒状、ひも状ウイルスの基本構造
5〜6%の核酸、そしてタンパクからなる。非常に少ない核酸量でタンパクと結合できる構造としてらせん状構造をとる。 粒子の長さは核酸の長さにより規定される。
ii)球状ウイルスの基本構造
外被タンパクのサブユニットが数個集まってヘキサマー、ペンタマーといった形態単位(キャプソメア: capsomere)を形成している。これが対照的に並んで正二十面体の外殻(キャプシド:capsid)を形成している。
iii)核酸の占める割合
RNAウイルス:棒、ひも状で5〜6%。球状で15〜45%。
DNAウイルス:17〜22%
脂質の外膜をもつウイルス:1%前後

試験管内再構成実験より、ウイルスの本体は核酸であると分かっている。

ウイルスの感染、増殖に必要なウイルス遺伝子をウイルスゲノムといい、これが一個のウイルス粒子の一分子の核酸中に含まれるものを 「単一ゲノムウイルス」、一つ以上のウイルス粒子の複数の核酸分子から構成されるものを「分節ゲノムウイルス」という。 分節ゲノムウイルスは粒子の個数により単粒子、二粒子、三粒子などに分けられる。カウントされるのは感染、 増殖に必要なゲノムの入った粒子だけなので、たとえば粒子が三つあっても一つがゲノムをもっていない、感染、 増殖に必要ないゲノムを持っているといった場合にはこれは二粒子分節ゲノムである。

(4)ウイルスの分類と命名

i)分類
植物ウイルスは世界で1000、国内でも300種類の存在が確認されている。Tobacco mosaic virusのような命名が広まっているが、科(family)、属(genus)、 種(species)といった階級分類をもつ二命名法による命名を目指して分類が進められている。分類はまだ途上にある。
ii)命名と表記
属(species)にはそれぞれタイプ(代表)のウイルスが定められており、 属名はこのタイプウイルスの種名を短縮した造語が多く採用されている。e.g.)Tobacco mosaic virus→Tobamovirus

(5)感染と増殖

i)感染
自力でクチクラ層や細胞壁を貫通することはできないので、媒介生物、傷口経由、あるいは接ぎ木などにより感染する。
ii)増殖と以降
細胞間移行:ウイルスの遺伝情報から合成される移行タンパクの助けを借り、 原形質連絡糸を通って隣接細胞へウイルスが広がること。移行スピードは遅い。
長距離移行:通道組織に達したウイルスが師部を通って植物全体へ広がること。移行スピードは早い。
iii)植物ウイルス遺伝子の種類と発現
一本鎖RNA(+):それ自体に感染性があるRNA。mRNAとして働く。
一本鎖RNA(-):(+)鎖のRNAを転写できる。それ自体に感染性はない。
アンビセンスRNA:粒子に含まれるRNA、 それから転写される相補鎖RNAの両者がそれぞれ異なるタンパク質のmRNAとして働く。すなわち、 一部が(+)で一部が(-)ということ。
iv)(+)一本鎖RNAウイルスの遺伝子発現(TMVの例)
6400のヌクレオチドからなるTMVのRNAからはRNA複製に関与する183kDa、126kDaのタンパク、 30kDaの移行タンパク、17.5kDaの外被タンパクが合成される。
そのまま翻訳すれば126kDaのタンパクが翻訳された時点で翻訳は終了する。だが183kDaのタンパクは、 126kDaのタンパクの終止コドンで翻訳が終わらずに次の終止まで翻訳されたものである。これは「読み過ごしタンパク」と言われる。
真核生物のmRNAは最初のORFしか翻訳しないので、そのままでは30kDaと17.5kDaのタンパクが翻訳されない。 これらのタンパクは直接翻訳されるのではなく、RNA複製の過程でサブゲノミックRNAという短いRNAが合成されたのに、 そこから翻訳される。

2.ウイロイド

(1)ウイロイドとは

  1. 単一、低分子のRNA
  2. タンパク質の外被をもたずに感染細胞中に存在する
  3. ウイルス様粒子は関与しない
  4. ヘルパー成分などの助けを必要とせず自立的に複製する
  5. タンパク質を翻訳しない

(2)構造・複製

i)構造
246-463塩基の低分子環状一本鎖RNA
中央部に中央保存領域(CCR:central conserved region)があることが多い。
一部のウイロイドはリボザイム(lybozyme)と呼ばれる自己切断機能を有する。
ii)複製
ローリングサイクル型複製による。

(3)ウイロイドの検出

  • 検定植物(indicator plant)に接種・接木して特異的症状を見る。
  • 遺伝子診断を行う。

3.ファイトプラズマ(Phytoplasma)

ヨコバイ伝搬性の植物病原体として、てんぐ巣病の植物切片から発見される(1967 土井ら)。 マイコプラズマとの類似性(多形を示す、テトラサイクリン系の抗生物質が効く)から、 マイコプラズマ様微生物(MLO:mycoplasmalike organism)と呼ばれていた。

(1)分類

16SrRNA遺伝子の系統解析により、スピロプラズマ属とともにモリキューテス綱に分類される。

(2)形態と感染・増殖・生活環

0.1-0.8μmの多形性の原核細胞で、細胞膜に包まれるが細胞壁を欠く。ほとんどのファイトプラズマはヨコバイにより伝搬され、 師部感染する。培養は困難である。

(3)ゲノムと染色体外DNA

i)ゲノム
DNA複製や転写、翻訳を行うのに必要な基本的な遺伝子はもつが、アミノ酸合成系、脂肪酸合成系、TCA回路、 酸化的リン酸化に関与するような各種遺伝子は持っていない。マイコプラズマと比べても代謝関連遺伝子は少ない。 これは栄養豊富な植物師部に感染することと関係があると考えられている。
ii)染色体外DNA
プラスミドにはバクテリアのプラスミドとウイルス双方の複製タンパクの構造的特徴を兼ね備えたタンパクがコードされる。また、 2種の染色体外DNAが互いに融合したタイプが見られ、 これは染色体外DNA同士による組換えというこれまでに例のない現象が起こったことを示唆している。

(4)スピロプラズマと難培養性原核微生物

i)スピロプラズマ(spiroplasma)
例外的に培養が出来た原核微生物病原。
ヨコバイ伝搬で師部感染。
「スピロ」の名前が示すように、長さ3-5μmの回転運動性のらせん構造をとる。
ii)難培養性原核微生物(=RLO:リケッチア様微生物)
これは細菌の一種。
多形を示す。
厚い細胞壁(約25nm)を持つが、一部これを欠くものもある。
代表的なものとしてはブドウピアス病菌(Xylella fastidiosa)がある。 これはヨコバイ伝搬で木部局在性細菌。ペニシリン感受性を持つ。

4.細菌

(1)分類

・主要6属
  • Clavibacter
  • Xanthomonas
  • Agrobacterium
  • Erwinia
  • Streptomyces
  • Pseudomonas
・特徴
  1. 核の染色体DNAは核膜に包まれない。
  2. 細胞質内にミトコンドリアや小胞体などの膜構造物はない。
  3. 核酸は微量のヒストン様タンパク質と結合しているが、有糸分裂や減数分裂はみられず、2分裂で増殖する。
  4. 一部の例外を除き、単細胞で組織分化しない。
  5. 原形質流動やエンドサイトーシス・エキソサイトーシス作用がみられない。
・分類法
a)細菌学的方法による分類
形態的性質、生理的性質、生化学的性質、病原性などの表現形質に基づく分類。cf.グラム染色
b)数理分類法
細菌の示す形質それぞれに同等の重みを持たせて評価、統計的に解析する。 病原性の有無も一つの性質にすぎないので重要とはならない。
c)化学分類法
細胞壁、脂質、タンパク質やアイソザイムの化学成分の類似性をもとに分類。
d)分子分類法
DNAのGC比率、相同性、ゲノムDNAの全塩基配列、rRNAの相同性、DNA制限酵素断片長多型などに基づいて分類する。

(2)細菌の構造

外皮構造
外膜
グラム陰性菌がペプチドグリカン層の外側にもつもう一つの膜。
タンパク質とリポ多糖(LPS)、リン脂質を含む。
LPSは植物が異物を認識したときに起こすHR反応(hypersensitive reaction: 過敏感反応)を抑えることがあり、これが宿主認識機構として働く。
O抗原。
タンパク質などの高分子の透過を妨げる障壁として働く。
養分などを通過させるための孔構造がある。
バクテリオファージ、バクテリオシンに対する特異的レセプター。
細胞壁
多糖とペプチドからなる網目状の高分子でできた剛性のある構造体のペプチドグリカンからなる。ペプチドグリカン層とも呼ばれる。
グラム陽性菌では15-90nmでグラム陰性菌では10-15nmの厚さ。
ペリプラズム
細胞壁とその内側にある細胞膜との間隙。陰性菌の方が厚いが、陽性菌にも存在する。
浸透圧調整を行う多糖、アルカリホスファターゼなどの酵素が蓄積し、酵素活性の中心。
細胞膜
リン脂質の2重膜からなり、中に多量のタンパク質が埋まっている。
リン酸部は親水性、脂質部は疎水性であり、選択的輸送を行う。
外部構造
鞭毛
フラジェリン(flagelin)というタンパクが螺旋状に結合したもの。
太さ15-20nmで、長さは菌体の数倍になることもある。
H抗原。
グループの識別に用いられる。
線毛
ピリンと呼ばれるタンパクからなる。
7-10nmで長さは0.5-20nm。
陰性菌にみられる。
細菌の接合に関与する性線毛などがある。
夾膜
体内で生産し体外に放出されるグルコース、マンノースなどの多糖がゆるく結合。 多糖は菌体外多糖(EPS:extracellular polysaccharide)と呼ばれる。
洗って流れるものは粘膜層、流れないものを夾膜と呼ぶ。
内部構造

核は二本鎖環状DNAを含む。生命活動に必要なタンパク質をコード。

プラスミドは性、薬剤耐性、毒素生産、バクテリオシン生産など生命活動に必須でない情報をコード。 菌によっては病原性もコードされる(e.g. 根頭がんしゅ病菌のpTi)

リボソームは50Sのサブユニットと30Sのサブユニットからなる70Sの粒子。50Sサブユニットは23Sと5SのrRNAを含み、 30Sサブユニットは16SrRNAを含む。16SrRNAは系統樹作成に用いられる。

芽胞

グラム陽性菌のBacillus属、 Clostridum属のみが環境条件が悪化した際に細胞内に一個形成する耐久生存器官。

(4)変異

i)集落変異
大型集落の中から病原性の弱い小型集落が出現する。
ii)病原性変異
培養中に容易に病原性を失うという変異を起こす細菌がいる。
iii)薬剤耐性変異
薬剤耐性プラスミド(R因子)の接合伝達などによる。
・ある細菌の性質を他の細菌に移す方法
  1. 接合
  2. 形質転換
  3. 形質導入cf.テンペレートファージ

(5)細菌が生産する生理活性物質

  • 病原性に関わるもの
    • 病原性決定因子
      1. EPS
      2. 植物組織崩壊酵素
    • 病原性を高めるもの
      1. 植物毒素
      2. 植物ホルモン
  • 細菌の生存に関連する物質
    抗生物質
    多くの細菌が生産する。
    バクテリオシン
    抗菌活性をもつが対象が限られる。主として近縁のバクテリア。
    シデロフォア
    鉄をキレートする。バクテリアが鉄を取り込むのに用いられる。
    生物により活性が異なり、鉄欠乏状態ではシデロフォアを分泌する細菌が優位となるため、 こうした細菌は生物防除の素材として用いることが出来る。
    エフェクター
    機能性分泌タンパク質。
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2006年06月07日

前半まとめ

・施設園芸の特徴と意義

施設内での園芸植物生産は「環境制御」ができる。制御できる環境は以下のようなもの。

  • 温度(気温、地温)
  • 光(日射量、日照時間)
  • 湿度
  • 潅水量
  • 風(送風)
  • 二酸化炭素濃度

なぜ環境制御をするかと言えば、「植物の生長を最大限にさせ、収量と品質を高める」ためである。 そのためにエネルギーを投資するのだから、投資以上の成果(収量、品質向上)がなければ施設園芸をやる意味はない。
そして、植物の生長は光合成と養分吸収(≒蒸散)にかかっている。すなわち、最大の目的は光合成と養分吸収(≒蒸散)の促進にあると言える。

?J.光合成と呼吸

(1)光合成と呼吸

光合成と呼吸は相反する反応である。つまり、光合成速度を上げるには

  1. 光合成速度を上げる
  2. 呼吸速度を小さくする

の2つの方法があるということである。もちろん、これらは同時に行われるべきである。

(2)光合成・呼吸の速度

・どう測定するのか?

光合成速度の測定方法には糖の生合成量を測定、光吸収量を測定など様々な方法がある。
このうち、現場においてもっとも効果的なのは二酸化炭素交換速度を測定する方法である。

二酸化炭素交換速度は真の光合成速度から呼吸量を引いた、いわゆる「みかけの光合成速度」であるが、生産現場で重要なのは 「みかけの光合成速度」なので、これを「純光合成速度」として扱う。

測定方法としては同化箱を用いるのが一般的である。

・単位

一定時間、一定の葉面積当たりに吸収された二酸化炭素量を単位とする。
mg・cm-2・min-1、 g・m-2・ h-1、 mol・cm-2・s-1といった表記をする。

(3)光強度と光合成

光強度と二酸化炭素交換速度の対応をグラフとした「光-CO2交換速度曲線」は植物により異なる。

ポトスなどでは低い光補償点と光飽和点を持ち、バラなどは高い光補償点と光飽和点を持つ。

これは原生地での生育環境に関連を見出すことが出来る。ポトスで言えば原生地は日の届きにくい密林だし、バラでは何もない草原である。

なお、ポトスのような光飽和点の低い植物に強い直射光が当たると葉やけを起こすことがあるので注意する。

また、光飽和点以上の光は無駄に葉温を上げるだけで植物にとって無駄な光である。ゆえに夏場は遮光栽培を行うことが多い。

(4)CO2濃度と光合成

大気中の二酸化炭素濃度はおよそ370ppmであるが、 2000ppmまでの二酸化炭素濃度であれば一般に植物の二酸化炭素交換速度は増加する。 ゆえに二酸化炭素を人工的に施与することは植物の光合成促進に繋がる。

・二酸化炭素施与の方法

  • 二酸化炭素ボンベを使用
  • プロパンガスを燃焼させる
  • 灯油ボイラを燃焼させる

なお、一般の施設園芸用暖房は燃料に重油を用いており硫黄分を多く含んだ燃焼ガスを出す。硫黄分は水分と結合すると強酸の硫酸となり、 植物に有害であるためこのガスは使えない。

・施与のタイミング

すでに十分の光合成を行っている晴天時にさらに光合成をさせるために二酸化炭素を施与するのではなく、曇天などで光強度が不足・ 光合成速度が落ち込んでいる日に晴天時と同等の光合成を行わせる目的で二酸化炭素は施与される。;天気の悪い日の、 それも日中に絞って二酸化炭素を施与する。

(5)温度と光合成

光合成も生体反応の一つであり、酵素反応なので温度の影響を受ける。
真の光合成速度を見るとそのピークは30〜35℃と高い部分にあり、たとえ50℃でも光合成は行われる。
ただ、呼吸速度も温度上昇と共に早くなり、特に30℃を超えたあたりから急速に増大する。
そして42℃前後で呼吸量は真の光合成速度に追い付き、見かけの光合成速度はゼロとなる。
そのため、見かけの光合成速度のピークは25~30℃にピークを取ることが多い。

植物種によって差が大きいのは呼吸速度の方で、熱帯植物ではゆるやかに上昇、高山植物などでは急速に上昇する傾向がある。このため、 見かけの光合成速度のピークは暖かい地域の植物ほど高温よりに、寒い地域の植物ほど低温よりにシフトする。
また、たとえ同品種であっても生育している温度により呼吸速度は異なってくる。低温なら呼吸量が増え、高温なら減るといった具合である。

なお、「温度」とは「葉温」のことなので、気温が高くても葉温を下げられれば高山植物もずいぶん楽に育てられるということになる。

葉温が高くなる原因は以下のようなものがある

  • 直射光→遮光してやることで解決
  • 蒸散不足→風通しを良くすることで解決

(6)湿度・土壌条件と光合成

湿度が高すぎれば蒸散が抑制され、葉温が上昇し、光合成が抑制される。
逆に低すぎれば過剰蒸散から植物体がしおれ、光合成が抑制される。もしくは過剰蒸散を防ぐため植物が自ら気孔を閉じ、蒸散が減り、 葉温が上昇、光合成が抑制される。
同様に土壌水分が少なすぎても気孔の閉鎖が起こり、光合成抑制の原因となる。

いずれも直接的ではないが光合成量に影響を及ぼす。

?K.蒸散

根からの養水分吸収は葉からの蒸散による植物体内の負の圧力により行われる。また、蒸散による気化熱は葉温に影響する。

すなわち、蒸散は養分吸収と光合成の療法に関与する極めて重要な要因である。

・蒸散と蒸発

蒸散は植物の葉(気孔)から水蒸気が放出されることで、蒸発は植物体以外からの水分の放出をさす。双方を合わせて蒸発散という。 潅水は蒸発散量と同じだけ必要となる。

(1)水ポテンシャル

物質はエネルギーが高いところから低いところへ移動する。水の持つエネルギーを特に水ポテンシャルと呼び、 蒸発散がどのように進行するかを考えるうえで重要なものとなる。

(2)葉からの蒸散

蒸散速度は以下のような関係式により説明される。

    Cl-Ca
T= ---------
       rs+rb
T:蒸散速度
Cl:葉面における水蒸気濃度
Ca:大気の水蒸気濃度
rs:気孔抵抗
rb:葉面境界層抵抗
            (最新施設園芸学 古在ら 朝倉書店 p.30)

この式から、蒸散速度を高めるためには、葉面における水蒸気濃度(気孔内空隙の水蒸気分圧)を大きくする、大気の水蒸気濃度 (≒大気中の水蒸気圧)を小さくする、気孔抵抗を小さくする、葉面境界層抵抗を小さくする、の4つの方法があることが考えられる。

1.気孔抵抗を小さくする

これは気孔を開放すれば小さくなる。気孔の開放を司る要素の一つに植物ホルモンのサイトカイニンがある。 サイトカイニンを増やせば気孔開度が上がるということである。

サイトカイニンは根端で生合成されるので、すなわち根の分枝を良くしてやれば合成量が増える。

根の分枝を良くするには以下のような方法がある。

  • 土の気相率を上げる
  • 適切な潅水(乾いたらたっぷり)をする
  • 適切な施肥をする
  • 地温を上げる

また、サイトカイニンであるBA剤を葉面散布することでも一時的な蒸散速度促進効果がある。

2.葉面境界層抵抗を小さくする

葉面境界層を薄くするor乱してやれば良い。

・株間を十分にあける

密植すると集団として分厚い境界層を持ってしまうので株間は十分にあける。

・風を利用する方法

・送風
循環扇により室内の空気を動かす。風速は2m程度で、植物体の上部に風をおこすようにして間接的にゆるやかな風を当ててやるのがポイント。 空気をあまり摩擦させず、回転させるように動かすと少ないエネルギーで済む。

・側窓と天窓の開放
光で温められた空気は上へ向かうため、空気は天窓から逃げて側窓から入り込んでくる。 植物体に近いところの空気を動かすためには側窓を低い位置に設置する。

・その他の方法

・植物体を動かす
モーターやコンベヤを利用して植物体そのものを動かしてやる。

3.大気中の水蒸気圧を小さくする

・湿度を下げる
同じ湿度ならば相対湿度が低い方が水上気圧は小さい。

・温度を下げて、その後上げる
飽和水蒸気濃度の差により、元の温度で含まれていた水蒸気量と下げた温度の飽和水蒸気濃度との差分、水が結露する。 その状態で再び温度を上げると湿度が下がる。

・暖房機を作動させながら天窓を開放
外気を温めるとより多くの水蒸気を含めるようになる。
そして、温めた空気に施設内の水分を吸ってもらい、そのまま外へ捨ててしまうことで除湿をする。

4.気孔内空隙の水蒸気分圧を大きくする方法

細胞内空隙には葉肉細胞より十分な水分供給があるので、細胞内空隙の水蒸気濃度≒その葉温での飽和水蒸気のうどと仮定して良い。 =相対湿度は常に100%と言える。
※ただし、十分に潅水が行われていることが前提

同じ相対湿度ならば温度の高い方が水蒸気分圧が高いので、葉温を上げてやれば良い。

葉温を上げるには直射光を当てる、室温をあげるなどしてやれば良い。

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2006年04月21日

イチゴの旬

路地で栽培すればイチゴの旬は5月である。だが現実には5月に良質のイチゴは出回っていない。

イチゴのほとんどはハウス栽培で、どの農家もイチゴの需要が最も高まる日、クリスマスの出荷を目標に環境を制御して栽培を行う。 そのため、最も良質なイチゴが出荷されるのは12月下旬ということになる。5月ともなると多くのイチゴ農家は出荷を終了する時期である。

注:加工用イチゴはまた別の話。

窒素効率の向上は本当に有用か?

窒素効率を高め、栄養分の少ない環境で生育できる植物は一見有用である。

だが、実際にはそのような植物がそのような環境で生育していたとして生産性が低いのは目に見えている。 通常の作物でも特に窒素をロスしているわけではないので、そのような植物を通常の環境で生育させたとしても、 特に生産性が高まるという事はない。

技術と問題のいたちごっこ

新開発された農法・農薬・品種が有用であればあるほどそれが単独で使われる事が多い。そうすると、 それに対応した問題(単一病害虫の大量発生、耐性昆虫、雑草の出現)が非常に現れやすい環境となる。

そして、新たに出現した問題を解決する技術もまた単一に広く使用される場合がほとんどなので、結局 「技術→問題→問題を解決する技術→それに対応する問題→…」という繰り返しがいつまでも続く。

育種による収量増加へのアプローチ

1.最大収量を上げる(光合成能力強化etc...)

2.ストレス(貧弱な土壌、病害虫etc...)に強くする

2.の方法のが手っ取り早くて確実。たとえば除草剤耐性を付けるだけでも大幅なコスト・労力の削減と収量増加が望める。

施設園芸の目的

植物の生長を最大限にさせることで収穫量、品質を高めることが目的。

そのためにエネルギーを投資して環境制御を行っているのだから路地より収量・品質が低下するようでは話にならない。

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